加齢黄斑変性症(診療内容)
Medical
加齢黄斑変性とは
老化に伴い、視力に重要な網膜の中心部分の「黄斑部」が変性するものです。このため視野の真ん中がゆがんだり、暗く見えたり、進行すると欠けて見えたりします。欧米では中途失明原因の第1位を占め、日本でも欧米並みに増加しています。
黄斑変性の中でも、網膜の下から新しい毛細血管(新生血管)が生えてきて網膜に損傷を与える「滲出型」は、より失明に至りやすいタイプです。
抗血管新生薬療法
抗血管新生薬療法とは
体の中には、新生血管の成長を活発化させる血管内皮増殖因子という物質があります。抗血管新生薬療法は、この血管内皮増殖因子の働きを抑える薬剤を眼内に注射することにより、新生血管の増殖や成長を抑制する治療法です。
治療について
月1回薬剤を白眼の部分から眼の中心の硝子体という場所に向けて注射します(点眼麻酔をしますので痛みはほとんどありません)。これを3ヵ月間繰り返します。その後、検査は月1回、視力検査、眼底検査、光干渉断層撮影等を行い、新生血管が残っている場合は再治療が必要になります。
光干渉断層計
OCTとは赤外線エコーを使用して、網膜黄斑部や視神経乳頭部の断層像を画像化する装置です。当院ではこれまでの機種よりも解像度の高いDRI OCT-1 Atlantis, RS-3000 Advance, Cirrus HD, Spectralis等を導入し、日々の診療に役立てています。
正常網膜
網膜(カメラのフィルムに相当する)の中央部を黄斑部(矢印)といい、約100万個の錐体細胞が密集しており、字を読んだり物を見るときに重要な部位です。網膜の厚さは約250μmで、黄斑部の中心部分は陥凹し、薄くなっています(中心窩といいます)。
正常視神経乳頭
視神経乳頭(矢印)は、網膜の神経繊維が収束する部位 です。乳頭の直径は約1.5mmで、中にはくぼみがあります(生理的乳頭陥凹といいます)。緑内障という疾患が進行すると視神経乳頭の陥凹が深くなり、大きさも拡大します。OCTでは視神経乳頭も詳しく観察できるため、緑内障の経過観察にも利用されます。
黄斑部に丸い穴が開いてしまう黄斑円孔、糖尿病網膜症や網膜静脈閉塞症などに起因する黄斑浮腫、加齢黄斑変性に代表される脈絡膜新生血管など、黄斑疾患には様々なものがあります。OCTはこれらの疾患の病態の把握や治療効果 の判定に利用されます。
黄斑円孔
黄斑部に直径約0.5mmの円孔があります(矢印)。OCTでは網膜の連続性が失われているのが分かります。
糖尿病網膜症
糖尿病網膜症では網膜に出血が見られますが、黄斑部に病変が及ぶと視力が低下します。この時黄斑部は黄斑浮腫という状態になっていることが多く、OCTでは網膜が腫れて厚くなっているのが分かります。
OCT検査は、専用の台にあごを乗せて撮影します。器械が直接眼に触ることもなく数分で終了するため、眼への負担が少ない検査です。
日常生活の注意
発生する要因として、
- 加齢によるもの
- 喫煙によるもの
- 高脂肪食品の過剰摂取
などが挙げられます。